漆は生き物で呼吸をしていると言っても過言ではありません。取り扱い方次第で、末永く御愛用頂けます。
※輪島塗のお箸は丁寧に扱えば長く使えますが、基本的に一年に一度、「新年」に新しくする(古いものは箸供養と言ってお箸に感謝して神社で燃やす)昔の神事に合わせて作られているので、一日2回必ず使用して毎日一年間(365日×2=730回使用する/730回食用洗剤で洗う)使うとボロボロになります(塗装に使われる「漆」は木の樹液の為)。御理解、御了承の程、宜しくお願い申し上げます。
輪島塗の御箸は木地が「あての木(通称あすなろ)」と決まっており、「あての木」の特徴は、硬質で、かつ、軽いと言うところにあります。その上に下地塗り、下塗り3回、中塗り(※中塗りは1回を乾かすのに3日間)、上塗り(※1回を乾かすのに7日間)を施し、熟練した職人による絵付け(※約一週間)を経て完成に至ります。
もちろん、「漆」も「あて」も自然で採れるもの。巷で騒がれている環境ホルモンの心配もございません。それどころか、先日、新聞で読んだのですが、漆には環境ホルモンの一種「ビスフェノールA」を吸収、分解する働きがあるとの事でした。また、「あての木(通称あすなろ)」も最近の健康ブームを受け、にわかに注目されて来ている木材です。
ところで話は変わりますが、漆はどうやって乾くのか御存じですか? 漆は乾燥させて乾かすのではありません。実は「湿気」で乾くのです。つまり乾燥したところでは、いつまで経っても〈固まらない=乾かない〉のです。
輪島のお箸屋さんには必ず「風呂」と呼ばれる、家庭にある「押し入れ」みたいなものがあって、そこに水を霧吹きでシュッシュッとして湿らせます。次に、漆を塗った製品と濡れたタオル等を一緒に閉じ込めて少しずつ乾かすのです。乾きの速さを調整しないと、同じ朱色でも、暗い色や明るい色となって変化が出てしまいます。乾かし方ひとつも職人芸が必要なんですね。
能登は観光に来られた事のある方は御存じでしょうが、いつも曇り空でジメジメと湿度も高いといったイメージがあります。そうした気候が漆器作りに最適だったからこそ、輪島塗が栄えたのでしょうね、きっと。